秋の休日

少し前から気づいていたけれど、うちの屋根を猫が歩く。
顔見知った猫である。バタン、ドスンと棲んでいる私なぞには
お構いなしに飛び歩く。
窓際でくつろいでいたりすると、その下をしたり顔で当の猫が
行き過ぎていく。
舌を鳴らして気を引こうとするものの、チラッと見るだけで屈
託なく行ってしまう。
時折窓下で鳴いている。どうやら私にゴハンをねだっているら
しい。昼夜なく屋根の上を歩かれる私としては迷惑千万な行為
をされているのにも拘らず、「猫や」っとゴハンを与えたくな
る。でも、ここで与えてしまうと癖になってしまうと律し、与
えたことはない。
猫に恩義を求めるのは詰まらない。えてして内田百聞のごとく
猫に御放念いただくにこしたことはない。

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私が小学生のころから家の中には猫がいた。今も実家に帰ると
猫がいる。どうやってウチの猫になったのかは、それぞれの事
情があるのだけれど、猫は家の中で一番に威張っている。
ウチの猫はあまり鳴かない。気を惹こうとしても一瞥だにしな
い。抱きかかえると暴れだし、如何様なこちらの要求も一顧だ
にしない。いつも我関せずに徹していた。
その猫も随分と長生きをしている。
相変わらず気を惹こうとしても一瞥もくれないが、抱きかかえ
ても暴れることもなくなった。嬉しいのやら悲しいのやら。
誰もが歳をとってこの世から去っていく。そうやって全てが続
いてきたことは十分知っていた。けれど、身近に感ずるように
なってその切なさばかりが琴線にひっかかる。
丁度良い時間でとまって欲しいと思う秋の雨。